理学療法士・作業療法士の大変さ

理学療法士や作業療法士はとても大変な仕事です。

 

しかしながら、とてもやりがいのある仕事でもあります。

 

以下に、PT・OTの大変な点を挙げてみます。

 

 

自分のための仕事ではなく、他者に対する仕事であるということ

 

どの仕事においても、その仕事がうまくいかなければ困る人は出てくるわけですが、医療職の場合は特に、相手(患者さんや家族)に対して、直接的に深刻な影響を及ぼします。

 

つまり企業であれば、そこで働く人が努力を怠れば最終的にはその企業の業績が悪化するわけですが、医療の場合は多くの場合被害を受けるのは病院ではなく患者さんです。

 

このように医療職はとても責任の大きい仕事です。

 

 

やり直しのきかない仕事であること

 

医療は、まったくやり直しがきかない、という特性があります。

 

たとえば、PT・OTが行う脳卒中発症後のリハビリテーションにしても、医師の行う膝の手術にしても、元に戻してもう一度行うことはできません。

 

そして、その時期でないとできない治療もあります。
脳卒中のリハビリテーションでいえば、病気になったばかりの時期の方が改善度合いが高く、時間が経つにつれて改善の可能性は低くなります。

 

従って、病気になって最初の半年間リハビリを受け、良くなかったので他の病院に変更してやり直す、ということはできないのです。

 

このあたりが、モノを扱う仕事と異なります。

 

 

頭脳労働、肉体労働、感情労働のすべての要素が含まれた職業であるということ

 

頭脳労働

人間の体はまだすべてのことがわかっているわけではないので、常に新しい知見が生まれます。

 

そのため、医療職は一生勉強を続けなければなりません。

 

リハビリテーションにおいては、患者さんを評価(検査)して状態を分析し、問題となっている点を考え、それを改善する治療内容を考案します。

 

治療(リハビリテーション)を行っていく中でも、日々変化する患者さんの状態を評価して、治療内容を変化させていきます。

 

このように、理学療法士や作業療法士はとても頭を使う仕事です。

 

肉体労働

よく理学療法士や作業療法士は、「白衣の土方」という言い方をします(これは差別的に言っているのではなく、仕事をわかりやすく表現しているだけです)。
つまり、医療職でありながら、肉体労働の部分もあるということです。

 

患者さんの中には、身体の大きな男性もいて、その人の身体が麻痺して自分では動かせなかったり、意識がはっきりしていなくて、やはり自分の意思で身体を動かさなかったりします。

 

そのような患者さんを介助して様々なリハビリテーションを行うのですから、とても力や技術を使います。

 

まして理学療法士や作業療法士が小さい女性であれば尚更大変です。

 

感情労働

Wikipediaによると、「感情労働とは、肉体や頭脳だけでなく「感情の抑制や鈍麻、緊張、忍耐などが絶対的に必要」である労働を意味する。」とされています。

 

リハビリテーションにおいては、患者さんや利用者さんに、どのような態度で接するかが成否のカギを握ります。

 

自身の状態に悲観している患者さんに対し、明るく接することで患者さんは気持ちが救われたり、ヤル気が出たりすることもあります。

 

時にはあえて叱咤しなければならないこともありますし、必ずしも完治しない患者さんに対しては感情的にならず冷静でなければなりません。

 

時には患者さんやご家族からの心ない言動にも耐えなくてはなりません。

 

このように、対人援助職である理学療法士や作業療法士は、医師や看護師と同じく感情労働者であるといえます。

 

 

患者さんをなるべく失敗させることなく上達させなければならない

 

一般的に、スポーツにおいても仕事においても、「失敗は成功の母」と言われるように、失敗を繰り返しながら上達していきます。

 

しかし、リハビリテーションにおいては、なるべく、あるいは一度も、患者さんに失敗させないようにしながら上達を図らなくてはなりません。

 

例えば、リハビリテーションにおいて、歩行や階段練習・日常生活動作の練習中に一度でも転倒させてしまえば、骨折を起こす可能性があり、入院生活や費用の増加や再手術が必要になってしまうかもしれません。

 

特に高齢者の場合には、その骨折が原因となって、元の状態まで回復しない場合もありますし、認知症が進んでしまったり、寝たきりになってしまうこともあります。

 

国は、財政状況の悪化から、入院期間の短縮を推進しています。

 

その短い入院期間の間に、例えば高次脳機能障害(人間らしい正常な思考等の障害)を合わせ持った患者さんに対して、一度も失敗させることなく、上達させていくというのは、細心の注意を要し、とてもストレスがかかります。

 

 

他職種との兼ね合い

 

理学療法や作業療法などのリハビリテーションは、医師の処方(指示)がないと行えません。

 

お薬の場合、医師が「必要な患者さんに必要な種類の薬を処方する」のですが、それと同様に、リハビリも医師が「必要な患者さんに必要なリハビリテーションを処方する」のです。

 

その医師がリハビリテーションに詳しいかどうかに関わらず、医師からの処方(指示)がないとリハビリできないため、どうしても医師の立場が上になりがちです。

 

立場が上である医師に対して低姿勢にならざるを得ず、気苦労が絶えません(もちろんすべての医師が横暴で我が儘なわけではありません)。

 

また、一昔前の理学療法士・作業療法士はリハビリ室にこもってリハビリを行うのが仕事で、患者さんは病棟から看護師さんが連れてきてくれて、終われば迎えに来てもらう、というスタイルが主流でした。

 

現在は、患者さんが実際に入院生活を送っている病棟・病室に行って状態を確認したりリハビリすることも多くなっているので、看護師さんとの連携が不可欠となりました。

 

看護師さんの中にはリハビリに対して理解のある方もいますが、まだまだ理解の少ない方もいますので、そのような場合、方針や意見が食い違うことがあります。

 

リハビリテーションは、病気そのものを対象とした他の医療と異なり、患者さんの生活を対象とした医療です。患者さんの病気はもちろんのこと、病気から生じる障害、栄養、家族、仕事、住宅などの多くの情報が必要です。

 

よって一人の患者さんのリハビリを行うためには、それぞれの情報を持っている多くの職種が関わる必要があります。

 

多くの職種というのは、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、医師、看護師、医療相談員(ソーシャルワーカー)、義肢装具士、栄養士、薬剤師、ケアマネージャーなどです。

 

多くの職種が関わることは患者さんにとってはいいことなのですが、関わる職種が増えれば増えるほど、ひとつの方針に向かってまとまって行動することが難しくなります。

 

方針を決めるためのカンファレンスと呼ばれる会議を開催したり、職種間(例えば、リハビリスタッフと看護師)での運用会議を開いたりする必要が出てきます。

 

その中では意見が合わなかったり、お互いに対して改善してほしいことがあったり、開催時間を調整したり、と、やはり精神的にストレスが増加します。

 

 

臨床だけでなく、教育、研究も実施

 

通常の、リハビリテーションを行う業務を臨床活動といいますが、勤務する病院・施設や立場によっては、臨床活動と並行して教育や研究活動を行わなければならないこともあります。

 

それは、職場からの指示であることもありますし、自分から進んで行うこともあります。

 

いずれにしても、臨床活動だけでも附属する雑務を含めてきちんと行うととても大変なので、教育や研究を行うというのは心身ともに負担がかかります。

 

時には業務終了後の時間を使ったり(帰宅が0時を過ぎることも・・・)、休日を使って行うこともあります。

 

 

勤務場所が毎日同じで変化がなく、配置転換もない

 

これは理学療法士・作業療法士に限ったことではありませんが、該当しますので記しておきます。

 

PT・OTがある病院に就職したとして、その病院が整形外科単科の急性期病院で併設の施設がなかったとしたら、そのPT・OTは、ずっとリハビリ室と病棟で仕事をすることになります。

 

会社であれば日々の出張、会社内の配置転換、支社や子会社への出向などの可能性がありますが、有資格者の集まりである病院では、病院内での配置転換はまずありませんし、介護老人保健施設や訪問リハビリなどの併設施設がなければずっと同じ場所で働き続けることになります。

 

変化がなくて安心という側面もありますが、飽きてきやすいのも事実です。

 

 

ポスト(役職)が少なく、昇進しにくい

 

理学療法士、作業療法士は役職の少ない職種です。

 

まず、専門職なので他の部署に移るということがありませんので、所属できる部署が限られています(ごくわずかですが、事務部長など関係のない部門の役職に就いている人もいます)。

 

病院では、リハビリテーション科(課、部)、理学療法科、作業療法科というのが一般的です。
役職としてはそれぞれの科に科長、主任、副主任がある程度です(主任、副主任は複数のこともあります)。

 

病院によっては、整形外科部門、脳卒中部門など部門に分けたり、教育担当、研究担当などの担当に分けたりして役職を増やしているところもあります。

 

しかし、スタッフの人数が少ないところは役職者も少なくなりますし、役職者を多くしているところは、スタッフの人数も多いため、やはり役職者の数が少ないことには変わりありません。

 

そして、日本全国の病院の数は年々減ってきていますし、企業のように支社を作るわけにもいきませんから、病院におけるポストの絶対数はそれほど増やせるものではありません。

 

介護保険施設数は少しずつ増加していますが、それでも年間PT・OT合わせて約2万人もの新入職員が誕生しているので、相対的にはポストの数は減っているといえます。